無生法忍の智慧の境界

『大般若経』巻四四九はこう述べている（大正 7・264b）：「如是不退轉菩薩摩訶薩，以自相空，觀一切法，已入菩薩正性離生，乃至不見少法可得。不可得故，無所造作。無所造作故，畢竟不生。畢竟不生故，名無生法忍。由得如是無生法忍故，名不退轉菩薩摩訶薩。」

これは、菩薩が諸法を空と観察し、見道の初地に入り、初めて一切の法が畢竟生じない理を見ることを言っており、それを無生法忍と名づける。

解説：明心開悟してから不退転の菩薩は、自身の五蘊十八界の相貌が皆空であることを観察し、この角度から更に拡張して、他の一切の法も皆空であることを観察する。全てが本当に生まれていない、世間の一つの法も得られない。このように観察できる菩薩は本当に一切の法空、一切の法無生を証得しており、四果阿羅漢の解脱境界に相当する。なぜなら、一切の法は得られないから、一切の法も何も造作しない。何も造作しないから、一切の法は畢竟生じない、全てが生まれていない。一切の法が畠竟生じないことを証得し、この理を認可することが無生法忍である。このような無生法忍を証得すると、無上菩提の大道でもう退転しない、永遠に菩薩道を行う。

無生忍は五蘊人我空だけを知っているが、無生法忍は五蘊人我空を証得しただけでなく、一切の法が空であることも証得しており、その範囲は非常に広く、程度は相当に深い。地前菩薩や阿羅漢に比べることはできない。地後菩薩は、無生法忍の智慧を持つため、修行と弘法以外に、世間の事を造作しない、世間の利益のためでない、名聞利養を喜び楽しまない、一心で仏道に専念する。