止観は即ち定慧である

止は定であり、観は慧である。修行は止観双運、定慧等持を要す。止は心を一つの境界に摂持し、一法に縁って動揺せず、観は縁った一法に対して観行・思惟・参究・思考を行う。止観は連なり通じ合い、止無くして観できず、観行無くして智慧生起せず。観する中で定も生じ止も得られ、二者は相補的である。慧無くして定できず、定無くして智慧生起せず。

智慧有る時、法に択択性が生じ、不必要な世俗法を放棄し、他に暫時無用の雑事干渉を排除し、最重要の事柄を選択できる。択択良く成れば、心は一処に止まる。慧は意識が深細な思惟を以て道理を明らめ、深細思惟の過程で意根を反熏し説得した結果である。

止も観も共に七識の修行に関わり、七識を一境に専注させ、意識心は単一対象のみを分別し、精力集中し心乱れ無く、問題を思惟透徹し隠れた道理を明らかにし仏法智慧を得る。観慧が定を生むとは、意識が道理を明らかにした後、再び意根を熏染し世俗法に執着せず意識散乱を避ける結果である。止も観も七識に用功し、七識を一境に専注させ、意識心を単一対象分別に集中させ、思惟を透徹させ真の内包を明らかにし真の智慧を得る。第七識は一境のみに縁れないが、攀縁を減じ作意・思量を少なくし漸く定に趨る。かくして意識に定が生じ止を得る。然らずんば意根が処々に攀縁し、意識は如何とも一処に止まれず。

定は開悟の基礎と前提条件であり、菩薩六度と菩薩三無漏学において定はその一つ。定力無くして観行できず、定力浅くして観行深入せず細密ならず、智慧開発できず。欲界の最高定たる未到地定を修得すれば観行が力を得る。これは色界初禅前の定であり、この定を得て参禅・法義参究・五陰虚妄観行を行う時、心が専一となり思惟が深密となり、法理を思惟透徹し破参開悟の可能性が生じる。

修行の結果と目的は智慧を開発することにあり、智慧有りて生死輪回を出離し解脱を得、智慧有りて仏道を成就する。悟道開智慧は諸々の定境より貴重かつ重要である。定力のみ有りて解脱の智慧無き者は、最多天に昇り福を享くるも福尽きれば仍三悪道に堕ち苦を受く。故に必ず定慧等持し偏修不可なり。

止観双運、定慧等修すれば、学仏必ず成す所あり。慧有りて定無き者は狂慧、狂慧は必ずしも徳有らず、其の見解は真実可靠ならず、煩悩畢竟降伏得ず。定有りて慧無き者は愚を守り、頑迷通ぜざる者は道無し。定慧共に有る者は必ず解脱を証し真実法益を得、仏法中に於ける大丈夫なり。